リーダーインタビュー

海や山を汚す厄介者・廃プラを宝に変える【リーダーインタビュー】

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廃プラを燃料や電気に変える技術に世界が驚いた!廃プラスチック油化装置を開発

株式会社ブレスト 代表取締役 伊東昭典氏

食品の包装袋、ドリンクの容器などプラスチック系の廃プラが身近に溢れている。使い捨てで便利な一方、使用後はそのほとんどが廃棄されることになり、焼却処理や埋め立て処分されるものや、山や海に放置、廃棄されるものもあるので、山や海の景観を損なったり、途上国では環境破壊や社会問題にもなっている。こうしたプラスチック系の廃棄物を油に戻せる廃プラスチック油化装置を開発したのが、株式会社ブレスト(神奈川県平塚市)だ。

プラスチックを投入すると、この油化装置を通して「油(混合油)」に変わる。この油は燃料にもなり、できた燃料によって発電機を動かすことで電気を作ることもできる。石油の消費、CO2や廃棄物の量も減らすことができ、温暖化問題やエネルギーやごみ問題の解決につながる可能性を秘める。

「プラスチックが油に変わる」。世界中で驚きの声が上がり、動画サイトに投稿された動画は400万回以上再生された。

「すべての廃プラに対応できるわけではありませんが、年間、世界で2億8000万トン生産されるプラスチックの約半分にあたる廃プラを油に変えることができます。この油で発電すると、日本で使用される約2年分、ネパールの約800年分の電力量に相当します」と代表の伊東昭典氏は言う。

2002年、NEDO(新エネルギー・産業技術総合開発機構)の助成事業に認定されたが、性能向上に向けての開発は資金的にも、技術的にも苦労の連続だったという。「環境問題に必ず役立つ技術」という理念を支援者たちに訴えていくため、ボランティアで小中高、大学で卓上型油化装置によるデモンストレーションを行い、体験学習できる『スクール油田事業』を企画・実施し全国100校以上を回った。

地道に取り組んだ技術開発や『スクール油田事業』などの活動が徐々に実を結び、自治体や企業から引き合いが増えはじめ、海外からも問い合わせが相次ぐようになった。2016年1月、太平洋の島国・パラオ共和国に納入した1日の処理量が1トンタイプの中型機が稼働を開始した。社員10名のベンチャー企業が世界の注目を集めている。

スクール油田事業で子どもたちに授業を行う伊東氏。廃プラが油に変わる実演に、子どもたちは興味しんしん。

スクール油田事業で子どもたちに授業を行う伊東氏。廃プラが油に変わる実演に、子どもたちは興味しんしん。

――製品について教えてください。

「プラスチックを装置に投入すると、1時間ほどで油(混合油)を生成できます。廃プラを熱で溶かし、発生したガスを冷却することで油として抽出することが可能です。自治体向けの大型装置の開発が本来、目指すところですが、実際に導入するとなると費用的にも、操作面での負担も大きいため、その前段階の機種として開発したのが卓上型油化装置です。

重さ50キロ、価格は115万円で、1キロの廃プラから約1リットルの油が生成できます。処理量1トン程度の装置に比べると導入しやすく、操作も簡単なのが特長です。1トンタイプはプラスチック1キロを油化した油で油化装置自身を稼働させたあと更に3キロワットの発電ができるまで、性能が向上しました。

小型から大型までタイプはいろいろあり、小型のものはパートさん一人でも動かすことができます。廃プラを処分でき、燃料にして発電できるので、企業からも多く引き合いをいただいています」

――製品開発の経緯を教えてください。

「小学生のころ、プラスチックは石油からできていることを知り、それならば、石油に戻せるだろうと思っていました。2001年、実際にその技術に出会ったことで、会社を設立して本格的に乗り出しました。NEDOの助成事業に認定されたものの、製品の性能は不十分でした。大きな借金も背負うことになり、そこから苦難の道が始まりました。

資金を援助していただいた方々の期待を裏切るわけにはいきません。課題はすべての廃プラには対応できないことでした。油化できるのは菓子類をはじめとする食品の包装袋に使われるポリプロピレン、レジ袋などに使われるポリエチレン、弁当容器などのポリスチレンなどで、ポリ塩化ビニールやペットボトル、ナイロンなどは有毒ガスの発生や配管の閉塞が生じる恐れがあるため処理できません。

ネックになったのは、廃プラを分別することでした。当時は『ごみの分別』の意識が今ほど、根付いていない時代です。この装置が『社会のために役立つ機械である』いうことを支持者に強く訴える必要があったこと、そのために実際に社会貢献につながる活動をやろうということで、思いついたのが『スクール油田事業』でした」

――小学生のときのアイデアが、起業に至る理由というのはユニークですね。

「もともと父親が鉄工所を経営していましたが、46歳で亡くなり、同時に会社も無くなりました。親の苦労を見てきて、製造業はもう嫌だと思っていたこともあって、その後、食べ物屋を目指していた時期があったり、冷凍技術を手掛ける会社の経営を行うなどしていました。

そんなあるとき、子どものころにふと思った技術が存在することを知り、起業したわけですが、環境問題に対する関心も今ほど高くなく、目指すところを語っても周囲から受けるのは『夢があっていいね』という冷ややかなまなざしです。先行きが見えない困難な時期がありましたが、今ではずいぶん、社会の環境問題に対する意識も変わりました。

今はこの仕事に携わったおかげで自分自身も大きく成長でき、社会貢献の手ごたえも感じるので、取り組んできてよかったと思っていますが、振り返ると思い出すのは苦労や失敗ばかり。厳しいことが少なくなかったですね(笑)」

パラオの子どもたちにも紹介。ごみ問題の解決につながると、海外でも注目を集めている。

パラオの子どもたちにも紹介。ごみ問題の解決につながると、海外でも注目を集めている。

――『スクール油田事業』は世界で実施されているそうです。

「これまで国内は小中高学校、大学を100校以上、海外はフィリピンなどのアジア諸国やアフリカ諸国を訪問しました。初めはボランティアでやっていましたが、現在は実費をいただければどこにでも伺うという方針でやっています。子どもたちが取り組むようになると親もそれを手伝うようになります。

この目論見はあたり、『ごみの分別』の意識は着実に広がっていきました。最初は教えるつもりで学校を訪問していましたが、その気持ちは徐々に変わり、今では子どもたちに教わることばかりだと痛感する毎日です。子どもは素直ですから、例えば、『プラスチックは臭わないのに、油化すると臭いがあるのはなぜ?』といった質問をぶつけてきます。「油化されると分子に分かれるから臭いがするんだよ」というのが答えですが、子どもたちにウソを教えるわけにはいきませんから、毎日必死に勉強です(笑)。

実際のビジネスでも初めは、売りたい!という気持ちが先行していましたが、今は社会貢献に携わっているのだという想いが強くなり、そのためにより良い製品にし、もっと広く、多くの人に知っていただきたいと思うようになりました。『スクール油田事業』には、当社の事業にかける想いの根幹があります」

――事業そのものが、御社のCSRにもなっているのですね。中小企業にも参考になりそうです。

「学校以外にも、環境イベントへの参加も積極的に行っていますが、一般の方たちとのふれあいを通して、環境問題への意識の高まりを感じています。先のCOP21では温暖化対策で世界が合意し、CO2削減に向け足並みをそろえることになりました。15年前、当社が創業したころに比べると、対価が重視される社会から、何ができたのか『効果』が問われる社会に変化したと思っています。

製造業に限らず、建設業、サービス業でも業種は違っても、自社が環境問題に対して何かできることがあり、ユーザーや社会が自社に何を求めているのかを考え、それを実行していくことが大切です。その活動を通して自社に求められていることも見えてくるはずです。中小企業もCSR活動を行っていくことは大切だと思います」

――環境の仕事に携わりたい人にアドバイスをお願いします。

「自分の子どもたちや孫、そして次世代のために働きたいという人や、環境問題に関心を持つ人が増えることはいいことだと思います。一方で仕事として関わっていくからには、自分が自立して生活していくことが大事ですし、周りの人たちの協力を得ていくことも不可欠です。私自身、事業で苦労してきましたが、信念を持ち続けられたのは『必ず社会に役立つ技術』と信じたからです。

粘り強く、ブレないで取り組めるのは、自分自身の強いマインドに他なりません。なぜ、環境の仕事に関わりたいのか、自分の考えをしっかり持つことが大切です。次世代を担う若い人たちに期待しています」

【会社プロフィール】

株式会社ブレスト(神奈川県平塚市四之宮7-3-1)

http://www.blest.co.jp/

 

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橋本滋

ライター。1965年生まれ。横浜市出身。サレジオ学院高校から麻布大学へ進む。新聞・雑誌記者、大手広告制作会社のライター、制作ディレクターとして、紙媒体やWEBで原稿執筆、コピー制作に従事。20年以上にわたり、企業、ビジネスなどの取材を行う。企業・ビジネス、PR、採用、環境問題が得意分野。地球環境問題のニュースサイト「環境ナビ」、環境にやさしいビジネス、トレンドを紹介する「BlueBizNet」等で執筆。
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