リーダーインタビュー

『フェアトレード&エコロジー』のパイオニアとして業界をリード 【リーダーインタビュー】

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フェアトレードカンパニー株式会社 常務取締役 胤森なお子氏

発展途上国の経済的、社会的に立場の弱い人に収入の機会を提供し、生活改善と自立を目指す国際貿易の仕組みがフェアトレードだ。フェアトレードカンパニー株式会社(本社・東京都世田谷区)のフェアトレード専門ブランド「ピープル・ツリー」は、ファッションを中心にしたフェアトレードビジネスを展開する、この分野の草分け的な存在である。

同社はイギリス出身の女性・サフィア・ミニー氏が1995年、東京で設立。現在、東京・目黒区の直営店・自由が丘店を始め、全国450軒の小売店に商品を卸し、売上高は創業時の約30倍の年商8億7000万円(2014年)と右肩上がりで成長を続けている。

かつて「品質は今ひとつ」という評価だった発展途上国の製品を「おしゃれなファッションブランド」に格上げするとともに、フェアトレードの認知度アップとエコ意識の高い女性を中心に新たな顧客層を開拓した。

夫の仕事の関係で一緒に訪れ、日本で生活を送っていたサフィア氏が、会社の前身となる環境・国際協力に取り組むNGOを立ち上げたのは、義兄の結婚式で訪れたアフリカのナミビアで、長引く戦争の影響により経済が停滞し失業者を溢れている状況を目の当たりにしたのがきっかけだった。

貧困にあえぐ人々を見て、自分にできることはないかと、現地の人たちが作っていたクッションカバー、木彫り製品、手編みカゴなどを日本に輸入・販売することを思いつき、すぐ実行に移した。

20代の頃、バックパックを担いで世界を旅して、自然を壊すリゾート開発、有害な廃棄物を出し地域の環境にダメージを与える工場など、先進国企業によるビジネスが影響していることを知った。そのときに胸を痛めたことも、本格的にフェアトレードを取り組む後押しになったという。

――ピープル・ツリーはフェアトレードファッションの専門ブランドとして、高い評価を受けています。エコを会社の理念の柱に位置付けていますね。

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自由が丘店(東京都目黒区)には衣料品、アクセサリー、雑貨、食品など1000点以上のフェアトレード商品が並ぶ。

「当社のもともとの出発点はフェアトレード&エコロジーであり、環境への配慮には特に気を配っています。フェアトレードによって現地の人々の生活水準を上げること、そして周辺環境にも配慮した、環境にやさしいビジネスであることを大切にしています。

現在、パートナーはアジア、アフリカ、南米の13カ国の約140団体に広がり、オーガニックコットンを使った衣料品、アクセサリー、雑貨などを企画し、日本、ヨーロッパで販売しています。

現地の伝統手法である手織り、手刺しゅう、草木染め、手編み、ブロックプリントなど手仕事によるその土地の伝統技術を採用するよう努めるとともに、可能な限り、その地方で採れる自然素材を使い、生産においては排水や空気汚染などでその周辺環境に悪影響を及ぼさないよう配慮しています。

例えば、通常のコットンの栽培では多くの化学肥料や農薬を使いますが、当社はオーガニックコットンを衣料品の約8割に使用しているので、農家の人々も健康被害や土地の汚染を心配する必要もありません。

WFTO(世界フェアトレード機関)が定める指針に沿ってフェアトレードを推進するとともに、環境を守りながら持続的な生産ができるように独自の環境ポリシーに基づき商品づくりを行っています」

――御社のフェアトレード商品は、ファッション業界にも大きなインパクトを与えました。

「以前は発展途上国の製品のデザイン、縫製面などは、日本の消費者にとって満足できるものとは言えませんでしたが、もともと彼らが持っている刺しゅうや織りなどの現地の伝統技術は素晴らしいものがありました。

より良い製品を作るために、デザイン、パターン作成、生地の生産、縫製とすべての工程を見直し、試行錯誤を繰り返しました。ふだんゆったりした服を身にまとっている現地の女性たちにとって、数センチのズレなどは気にする必要がない文化なんですね。

しかし、日本の消費者にそれは通用しませんので、現地スタッフの意識改革から始まりました。『なんでこんなに細かい要求をするんだ。もうできない』という生産者たちに品質が向上すれば売り上げもアップし、発注も増やせるということを辛抱強く説明しながら、技術や品質レベル向上に取り組んできました。

その結果、一生けん命やれば、評価され、自分たちの生活の向上につながる――。それが徐々に理解されるようになり、現地で働く女性たちのモチベーションアップにもつながっていきました。

結果的に現地に雇用と生活の豊かさを生み出すことができ、『ピープル・ツリーに自分たちは商品を納めているんだ』ということが彼らの技術の高さの証明であるとともに、『誇りである』と思ってもらえるまでになりました」

――慈善事業色のイメージが強かったフェアトレードをビジネスにレベルアップさせた点が画期的ですね。

「私たち自身が技術の向上に努める一方、デザイナーや有名女優などセレブらの協力で、メディアにも取り上げられるようになり知名度も徐々に上がっていきました。

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アクセサリーは、障がいを持つ子どもたちに車いすを贈るため、売り上げの一部を寄付している。

商品は20代~中高年まで幅広い世代から支持を集めていますが、オフィスに着ていく目的で購入する30代、40代の女性も増えています。熱心なエコ派ではないけれど、同じ商品を買うのなら、環境や人にやさしい商品を選択したいという消費者が増えています。

もともと人々にそんな意識や想いがあったところに、ピープル・ツリーの商品が合致したのでしょうし、そういう意味では新しい消費ニーズを掘り起こしたとも言えます。

フェアトレードファッションは人だけでなく、環境にもやさしいということを訴えていますが、その姿勢が支持され、理解が広まっていることはうれしいですね」

――他にはどんなところを工夫していますか?

「環境への配慮は、商品づくりだけでなく、すべての工程に及びます。現地からの配送においても船便を使うなど、環境負荷の少ない手段を可能な限り、採用するようにしています。その際の梱包などにも、商品によってはビニールなどを使わず、紙袋を使用していますが、確認作業をする際など外側から見えないなど、作業上の効率性でマイナスな面もあります。

作業効率は常に向上を図る必要がありますし、コスト面の要素、環境負荷とのバランスはもっとも頭を痛ませるところです。しかし、こうしたところにも徹底して配慮することは当社のこだわりであり、責務でもあり、今後もより良いカタチを追及していきたいと考えています」

――消費者の意識に変化はありますか?

「近年、社会貢献をしたいという若者世代は多くなっていますし、モノを大事にするという意識も高まっています。私たちは利益至上で、生産国で働く人々の労働環境や地域の環境を顧みないビジネスにNO!といってきましたが、フェアトレードが特別なことではなくごく当たり前のことになってほしいと考えています。

持続可能であるものとないものの選択肢があるのなら、環境に配慮した商品を選びたいと思う消費者が増えています。『フェアトレード&エコロジー』という当社のコンセプトへの理解はますます広がっており、手ごたえを感じています」

――組織風土について教えてください。

「社長もファーストネームで呼ぶフラットな組織です。転職で入社した社員がほとんどで、前職は同じアパレル業界で働いていたけれど、ピープル・ツリーの方針に惹かれた……とか、社会貢献できる仕事がしたいと思った……など、様々な業種業界出身の人が働いています。

社会に貢献したい、役立ちたいという志向のスタッフが多いので、自分がしたいことと、実際にしている仕事が一致しているともいえます。その意味ではベクトルが同じ方向に向き、社内の活気につながっていると思います。自分の仕事に誇りややりがいを持っている…ということは会社にとっても財産です。

数人で始まった当社ですが、今ではスタッフは50名を超え、考え方も多様になっています。生産者に仕事をもっと多く発注するためにも、もっとたくさんの人に広めていかなければなりません(笑)。そのために、一人ひとりの力を最大限に伸ばしていく必要があります。会社が目指す想いをスタッフ全員で共有できる体制をつくっていきたいと思っています」

【会社プロフィール】

フェアトレードカンパニー株式会社(本社・東京都世田谷区奥沢5-1-16)

http://www.peopletree.co.jp/

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橋本滋

ライター。1965年生まれ。横浜市出身。サレジオ学院高校から麻布大学へ進む。新聞・雑誌記者、大手広告制作会社のライター、制作ディレクターとして、紙媒体やWEBで原稿執筆、コピー制作に従事。20年以上にわたり、企業、ビジネスなどの取材を行う。企業・ビジネス、PR、採用、環境問題が得意分野。地球環境問題のニュースサイト「環境ナビ」、環境にやさしいビジネス、トレンドを紹介する「BlueBizNet」等で執筆。

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